PSJ渋谷研究所X(臨時避難所2)

はてダ http://d.hatena.ne.jp/kamezo/ からインポートしただけ

「神の手」まとめ:日本での初出、「受け取ったらどうする?」など


にゅーあきばどっとこむ」で採り上げられて、半日で数百人が「神の手」の記事にアクセスしてきてる。いい機会だから、コメント欄などでの情報をまとめておくことにしよう。


この記事は、「日本での初出」「海外での初出」それから「受け取ったらどうしたらいい?」などのFAQ(よくある疑問)の3つに分かれている。


■日本での初出
「神の手」は「goatse」へのオマージュとして作られた。
今のところ、日本での「神の手」画像の最初の掲載例とおぼしきページは、「みんなのネタサイト pya!」のこの記事である。


今度は雲です(2003年8月)


最初期のコメントを見ても、作られたネタ画像で、同工異曲のものが多数あったのだということがわかる。


そう、こうした「goatse」へのオマージュは実は無数にあるのだ。前述の「pya!」への掲載例だけでも、こんなにある(google検索結果)。「pya!」では下ネタは2007年に削除されたそうなので見てみてもだいぶ安心。少なくとも、オマージュされた対象である「本当の大元」を見るような仰天なことにはならない(本当の大元をどうしても見たい人は、はてなキーワードからリンクされている、かなりグロな画像なので覚悟が必要だ)。


比較的気持ち悪くない例を、いくつか紹介しよう。「神の手」との共通点はわかるはずだ。


まずこれ。いずれもCG系で、不快感はないはず。ただ、元ネタを知らないと、「神の手」同様になんのつもりなのか理解できない可能性はある。


今度はバラ星雲です (2004-01-13)


今度は台風です (2005-01-22)


下記は実写だが不快感はない。ただしやはりわかりにくい。


今度はゲーム機です (2004-03-28)


今度はサポーターです (2003-10-30)


今度は彫像です (2005-01-13)


下記も実写だが不快感はほとんどないと思う。でも、こういうのを見たら、それ以後ICカード、メーリーゴーランドなんかが例のオッサンにしか見えなくなるかもしれない。だから「納得いかない!」という人以外にはオススメはしない。


今度はDEBIT CARDです (2004-11-14)


今度はメリーゴーランドです (2005-01-16)


今度はハッピーホリデーです (2003-12-20)


以下は、砂上や雪上に元ネタをはっきりと想起させる絵が描かれたもの。ぼくは不快だった。だから、やはり「ぜーーったいに、納得いかない!」という人以外にはオススメしない。


今度は砂に書いたです (2004-01-30)


今度は雪です (2005-01-02)


まあ、こんな調子で際限なくたくさんあるのだ。もうお腹いっぱいでしょ? でも、同工異曲が無数にあるということには得心がいったでしょ?


一方、国内のブログでの初出は、今のところ2007年06月まで遡ることができている。いわゆるスピリチュアル系のサイトだ。そのコメント欄で「あっ☆これは沖縄の空に現れた神の御手のお写真ですよね?私も偶然かいえ必然か(笑)去年知人からいただいた時感動しました。」と書かれているので、2006年には沖縄説が登場していたことになるが、その実例を見つけることはできていない。


■海外での初出
海外では、チェーンメール化しているデマ画像であることが、下記に報告されている(はてなキーワードに掲載されていた)。


The Hands of God(About.com: Urban Legends)
http://urbanlegends.about.com/library/bl_hands_of_god.htm


記事自体は「Last updated: 09/07/04」とされており「pya!」の例よりも新しいが、ここで紹介されているメールは、2003年3月5日のものとのこと。ただし、言及されているハリケーン・チャーリーは2004年8月のはずなんで……メール自体はなんか間違っているか、日付がガセなのか。


ぼくが見つけた範囲では、同様の報告は下記が最も古くて、2004年9月9日のもの。


Hands of God Email(Issue 37 - Hoax-Slayer Newsletter 9th September, 2004)
http://www.hoax-slayer.com/issue37.html#one


ホントのオリジナル画像は、すでに失われているらしい。


英語版wikipediaでも「Goatse.cx」の項に、この写真のことが掲載されている。初めて言及されたのは、履歴によると2004年10月9日。
http://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Goatse.cx&oldid=6475454#Parodies_and_tributes

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Parodies and tributes


・Snopes.com has an article, "The Hands of God", about an image of a cloud formation that looks suspiciously like the Goatse.cx photo.

Snopes.comは、最初の記事で触れた「Urban Legends Reference Pages」のことで、そこに「goatseネタ」として掲載されたよ、という記述ですね。
「Urban Legends Reference Pages」と「Hoax-Slayer」のどちらが早かったのかはわからないけれど、「Wikipedia」も、負けず劣らずの早さだったということのようだ。




【Q&A:「神の手」を見かけたら】
質問されることが多い話に、なんとかお答えしてみます。あくまで、ぼくの考えでしかないけれどね。


Q:絶対にニセモノだ、とは言えないよね?


A:「絶対ない」は証明できない。でも、まず間違いなくニセモノ。


順当に考えればネタ画像。2003年にgoatseへのオマージュとして作られて、2004年にはGod Handとか言われてチェーンメール化したってことだろう。確証はないけれども、これだけの状況証拠があれば十分だと思う。
決定的に言えるのは、少なくとも「2007年の沖縄の写真」とか「最近」とかいうのは間違っているということ。だって、2003年ごろからこうしてネットに上がっているのだから。


そして、コレが本当に神かなにか超自然なものの仕業だとするならば、「神様もgoatseを知らないわけじゃあるまいし、ずいぶんと悪趣味なことをするよね」ってことだ。
もちろん、超越的なモノの意図なんか、ぼくらには計り知れないというだけのことかもしれないけれど。


「これが超自然なもので、なにかいいことがあったらいい」っていう気持ちはボクにもわからないではないし、そんなことはあり得ないとは言わない。けれど、この写真が「確かに不思議な現象を写した写真だ」といえるような経緯は辿っていない、ってことだけは言えてしまった。それはあなたにもわかってるんだと思う。


Q:ブログの記事にしてる人がいるんだけど、教えてあげた方がいいよね?


A:知らない人ならスルー、お友だちならそっと、がいいかな。


信じちゃった人のなかには、自身の病気や家族の病気、人間関係などなどさまざまな問題に直面している人もいる。記事からはそれがわからないケースもあることを考えると、笑うことはもちろん、気軽に「それはコレコレが元になった捏造画像で」などと指摘することもできない。
彼らは、心ない誰かに翻弄されただけなのだ。いつかどこかで本当のことを知るかもしれない(そしたら二重に傷つくかもしれない)。それだけで十分だろう。


だから未知の人がブログに「神の手」を掲載しちゃっているのを見かけても、そっとしておくしかないのだろうと思う。おそらくは、おもしろがって多数に転送したような「ちょっとタチが悪い人」だったら、あえてそれをブログに書いたりはしない場合が多いだろうということも予想できる。ってことは、ヒドいやつは誰にもなにも言われないで、ヒドいやつにノセられた人だけが痛い目を見ることになりかねない。


ただ、それがお友だちなら、そっと教えてあげるのもいいんじゃない? でも、そのお友だちを傷つけないようにね。自分がちょっとでも肯定的に評価したものにケチがついたら、誰だってうれしくないもの。それをみんなが見ている前でやったら……。
こんなものが原因で友だちが一人減ったら、バカバカしいでしょ?


Q:知り合いからメールでもらっちゃった。真実を教えてあげるべきでしょうか?


A:まずは止めればオッケー。教えるならお礼を言いつつおだやかに。


自分が「神の手」メールを受け取ったときに、送り主にそれがなんなのかを教えるべきか否かで悩む人も少なくないようで。
あえて指摘しなくても、自分に届いたチェーンメールをそこで止めれば、それだけでも「増やさない」という形で貢献したことになる。それでもいいんじゃないだろうか。
もしも指摘するなら「な〜んだ、信じちゃうところだったじゃないかあ(^◇^;)」ってぐらいがいいんじゃないか。「あり得ねえだろ!」とか「有名なのに知らないの?」なんて言っちゃうと「本物じゃない証拠はない!」なんて意固地になりやすい。
指摘するときも、送ってくれた好意にはお礼を言いたい。本気であなたの幸運を願ってくれたのかもしれないでしょ?
繰り返しになるけど、こんなもので友人と不仲になるのはバカバカしすぎる。


Q:だけど、自分の幸福を願ってただけならジコチューじゃねえの?


A:そうかもしれない。そうじゃないかもしれない。


送り主が願ったのは自分の幸運なのか、受け取る人の幸運なのかなんてことを考えるのは虚しい。送り主だって、どっちだかわかってないんじゃない?
少なくとも、あなたに対する悪意はなかったんだよ。それだけで十分とは思えないかもしれないけど、責めるまでのこともないんじゃない?


Q:なんでこんなもん信じちゃうの?


A:いつも「なんかいいことないかな」って思ってるのかもね。


「おまじない」の類いなんて、真剣に信じている人はそんなにいないよね。「多くの人に送れ」という以外は、誰にとっても悪いことはなさそうな文面だから、深く考えなかった人が多いんじゃないかな。
ぼくも「見るからに加工されてる」って思ったけど、そういうソフトを触ったことがない人や、CGや画像加工に関心がない人がわからなくてもおかしくないとも思う。
チェーンメールはよくないよね」って言っている人だって、なぜよくないと言われているのかまでは知らないことは珍しくない。
だから、引っかかるのは無理ないのかもしれない。


でも、どっかで「棚からぼたもち」「どっかから突然やってくる幸運」があったらいいなあ、なんて思っているのかも。前の方にも書いたけど、なかには、つらいことや苦しいことがあって……っていう人もいる。それは忘れたくない。


Q:なんでこんなもん作る人がいるの?


A:わざとじゃなく、「伝言ゲーム」や「早とちり」で内容が変わっちゃうのかも。


ただの「おもしろ画像」のはずだったものを見た誰かが、わざと話を作ったりねじ曲げたりしたのかもしれない。その場合は「愉快犯」ってことなんだろう。
だけれど、今回徐々にメールの内容が変化して行くようすも、見たように思う。過去の「幸福の手紙」や「不幸の手紙」でも同じなんだけど、わかってるのは「同じ内容がそのまま次の人に渡るわけじゃない」ってこと。
チェーンメールなら、転送機能やコピペを使えば内容は変わらないはずなんだけど、文面をわざわざ打つ人もなかにはいて、そのときに記憶で再現していると、「沖縄の人からもらった画像」が「沖縄の人が撮った画像」になったり、「友人の友人から送られて来た」が「友人の友人が撮った」になったり、そんなことは簡単に起きるだろうと思う。「7人に送ると願いがかなう」が「7人を超えても構わない」になり、これが「7人以上」と受け止められて「多ければ多いほどいい」って話になっていったのは、典型じゃないかな。



おそらく、このチェーンメールの流行もすでにピークは過ぎた。検索でここに来る人の数が徐々に減っていることと、ブログの記事も徐々に減っていることからの推測だけど。
でも、また復活してくる日もあるかもしれないし、似たような別のものが出てくるかもしれない(『ウルトラQ』のナレーションみたいだけど(^^;;)。
だから最初の記事の最後に書いたことを、ここにも書いておく。


■教訓


1. 引用が正しくされていない(出所が明確でない)情報を信じない。
2. チェーンメールを信じない、回さない。
3. 自然だって食べ物だって、いろんなものに見えます。人間だもの。