PSJ渋谷研究所X(臨時避難所2)

はてダ http://d.hatena.ne.jp/kamezo/ からインポートしただけ

「全員で目指せ皆勤賞」という指導


最初に記事を読んだとき、「学校全体での取り組みならば、自分の病欠のせいで、クラス全体に迷惑をかけたと感じて不当に傷ついた子どもが、残りの全クラスにいるのかもしれない」と考えて、ぞっとした。


記事を読み直して、最後の談話に「不可能だと思っていたことでも努力すれば可能になる」とあったことで、一昨年の体験を思い出した。

長女の高校受験の際に、いくつかの都立高校を見て歩いて、「均質」ということに強い違和感を感じたせいもあるに違いない。「学力で薄く薄く輪切りにする」のが今の都立高校受験だとすると、その結果生まれた均質さは、一部の上位校を除いて「諦め」「無力感」「敗北感」を受験校選びの段階から生み、それが高校では倦怠感という形で表出されているのではないかと思えてしかたがなかったのだ。


PSJ渋谷研究所X: 子ども、「校長先生の授業」、TOSS - 2

もっと以前、30年以上も前に自分自身が1年間通った底辺校で、1年間で学年の人数が激減して驚いたことも思い出した。ぼくのいたクラスだけで5、6人がやめた。ヤクザに杯をもらってやめちゃうやつとか、なんとなくフェイドアウトするヤツとか、いろいろだったけど。学年全体では20人以上やめてたかもしれない。


入学時点から自分は無能な敗北者だと決め込んで、だから学校なんか行ったって無駄だとか、勝ち組にはなれないんだから行く意味わかんねえとか、そういう生徒がたくさんいる学校っていうのが、あるところにはあるんだと、ぼくは思っている。


この記事の学校は、いったいどんな学校なんだろうとググってしまった(そんなことをしている場合ではないのに。て、いまもそうなんですが。ええ、逃避です・汗)。実際にその学校を知る人の声がどこかにないか、探してしまった。公式サイトや受験情報サイトでは、そこまでの学校ではないようにも思えた(前任校の進路状況新任校の進路状況)けど、実業系や総合科の学校のことはよく知らないので、どう考えたらいいのかよくわからない。学校を知る人の声は見つからなかった。


ただ、見つけた情報の一つにこんなものが。

  • 教育困難校」に少人数学級(多クラス展開)の先行実施を(県教組 PDF

千葉県の高校教育が抱える課題は、中途退学者や長期欠席者の顕在化の問題です。(中略)公立高校の33%の学校に、中途退学者の73%が集中していることになります。
この学校がいわゆる指導困難校や底辺校だと言いたいわけではない。しかも、この数字はしばらく前のものだから、状況は若干違うかもしれない。


生徒たちが「無力感」「無能感」にとらわれて、なげやりになっている学校というのが、実はそれなりの数あるんだけど、それはあまり知られていないんじゃないか、ということに気づいたのだ。だから、こんな資料があるんだよね? この資料にあるように、一部の学校に集中しているせいかもしれない。


朝日の記事をもう一度読み返すと、そこには「なぜ」がまったく抜けていた。「なぜ、そんな指導になったのか」「なぜ、その学校でだったのか」がない。だから、ぼくのブックマークコメントは極めて中途半端ものになった。

kamezo[メディア, 教育, 文化, 格差] 指導の目的を書かない報道。/イヤな指導ではある。/勝浦若潮http://chiba.okinawa66.com/200/418.html 一宮商業高 http://chiba.okinawa66.com/400/428.html/「まず学校に来ようよ」という指導か。無気力化が進んでいた? 2009/04/22


ほんとのところはわからない。生徒にも教員にも無気力・無能感が蔓延している学校で、「まずは『自分は学校に行ける』というところから始めよう。成功体験を生徒に積んでもらおう。目標は高く、皆勤賞を目指すことを掲げよう。ひょっとしたら、どっかのクラスが達成するかもしれない。そうしたら、自分たちの可能性を信じられるようになるのではないか」という指導だったのかもしれない。そうじゃなくて、ほとんど理由らしい理由のない欠席や中退がむやみに多かったなんてことはなく、許しがたい弱者抑圧型の偏屈教師を、スパルタ歓迎な記者が迎合的に描いたのかもしれない。舌足らずな記事だけど、記者やデスクは、地方欄に載るんだから校名で地元の読者にはわかる、これで十分「あの学校が立ち直るかも」と期待してもらえる、「オレたちにだってできるかもしれない」と考えてもらえると考え、実際に従来はこういう書き方で問題がなかったのかもしれない(ネットで確認できるのは地方面じゃないんだけど、内容から言って全国版に掲載されるような記事じゃないよね)。


記者もデスクもぼくも、自分の問題意識でしかモノを見ることができない、考えることができない。それだけのことなのかもしれない。


ううう。コワい考えになったところで仕事に戻ろう(冷汗