PSJ渋谷研究所X(臨時避難所2)

はてダ http://d.hatena.ne.jp/kamezo/ からインポートしただけ

虐待と届かない通報


大阪市西淀川区の小4女児行方不明事件が、一転して虐待死という話になった。近隣住民による目撃証言も少なくなかったようで、通報したのだが実を結ばなかったという報道もいくつか見かけた。25日の朝日新聞の報道では、警察に複数回にわたって通報したという西淀川署防犯協会の防犯支部長(67)の談話が採り上げられている。

  • 「臭い、出て行け」虐待情報届かず 大阪・女児死亡朝日新聞 2009年4月25日)(魚拓
     支部長の男性は24日、朝日新聞の取材に応じ、大阪府警西淀川署に報告したと明かしたが、その日時や相手は明言しなかった。一方で、昨年11月末と今年3月末、複数の近所の人から「せっかんしているのではないか。警察に話してほしい」などと求められ、その都度、同署幹部に直接面会するなどして伝えたという。署側は「また調べる」などと答えた、としている。
     西淀川署は「3日の情報は署に届いていなかったのではないか。あったら記録に残るはずだが、そうした記録はない」。それ以前の虐待情報も「そういう話を聞いたという事実はない」と否定する。


日本テレビは、町会長が通報したという報道。

フジ系列でも似たような報道。

  • 大阪市小4女児遺体事件 小林容疑者の長男「聖香ちゃんはよくベランダに出されていた」(04/25 17:58 関西テレビ フジニュースネットワーク)(魚拓
    また、近所では女の子の泣き声が頻繁に聞かれていて、近所の人は3月、警察に虐待の相談をしたと話している。
    警察に相談した近所の人は「わしは警察に言うたで。『虐待しとるんちゃう? いっぺん家、調べたら?』って言うたことは言うた。(警察は)『調べた』言うとるけど、果たして調べてるか、わからへんわな」と話した。
    これに対し、西淀川警察署は「捜索願が出された4月7日以前に相談はなかった」としている。

すべて同一人物の談話かもしれないが、もしも別人も混ざっているならば、そして談話の内容が事実ならば、通報は1度や2度ではなかった可能性もある。


今年3月末には、北海道でも似たような経緯をもつと見られる虐待事件があった。児童相談所に複数回の通報があったにも関わらず、虐待死を防げなかったと報道された(当初の報道では通報は2回とされていたが、後に8回に修正されている)。


この北海道のケースでは、道内で類似の事案がないかの調査が行われ、懸念されるケースがかなり浮上している。


大阪の件では府警や児童相談所への通報の有無などは、今後もはっきりとしたことはわからないかもしれない。しかし、通報されていても同じ結果に終わっていた可能性が、必ずしも低くないことがあり得ると言えよう。


こうした事例からなにが言えるのかは慎重に考察する必要がありそう。


http://www.orangeribbon.jp/child/data.html
1週間に1人の子どもが虐待で死んでいるとするデータ。
1年間におよそ50人。各都道府県で年に1人というのと、どれぐらい違う?
20歳未満の「未成年人口」はおよそ2千万。未成年者の0.00025%が虐待で死んでいる?


児童虐待の実態 ― 東京の児童相談所の事例に見る ―(東京都福祉局 平成13年)

平成12年の東京都の虐待は、子ども1000人につき0.7人。

報道されている内容を見ると、大阪のケースは3月後半〜4月に「中度虐待」から「重度虐待」「生命の危機あり」へと急激に(一気に?)変化していったのではないか? 虐待の度合いは一般に可変的なのだろうか?

生命の危険があるような重度の虐待は3%ほど。

 また、児童相談所などの介入が行われないと、子どもの健康や成長・発達に深刻な影響が考えられる「中度虐待」以上が約46%とおよそ半数近くにのぼりました。
 一方、「軽度虐待」と「虐待の危惧あり」は合わせて約54%と全体の半数を超えています。

平成12年の児相への通報全体の2割が実際には虐待ではなかった。また近隣住民からの通報では4割以上が虐待ではなかった。

 つまり、「虐待の世代間連鎖」を含めて、生育歴だけに焦点を当ててその要因を把握しようとしても十分な説明ができないということがいえます。
 また、「就労状況」に関して、「女性の社会進出の拡大が、家庭の養育機能を低下させ、虐待が増える」という捉え方がありますが、家事専業など、家庭で子どもと一緒に過ごす機会が多い母親の方が高い率を示しており、こうした考えには、無理があるということが言えます。

 その他の要因では、
・「虐待についての考え方」では、虐待を認めず、しつけと主張するなどかたくなな姿勢を示す親が多いこと
・「心身の状況」では、全体として「性格の偏り」が2割と高い割合を示しているほか、特に母親についてみると、「精神病またはその疑い」が15%、「神経症またはその疑い」が14%見受けられ、精神的な要因が背景にあることが虐待に結びつきやすいことが示されました。

 また、虐待が行われた家庭の特徴を見ると、「経済的困難」が4分の1以上の家庭に見られ、それが「夫婦不和」や「孤立」等の要因にも強い影響を及ぼしています。

 こうして、親の要因と、虐待が行われた家庭の要因を重ね合わせてみると、経済的困難、就労の不安定、ひとり親家庭、夫婦間の不和、育児疲れや孤立感などが、親の精神状況と複雑に絡み合い、虐待にまで至っている様子がみてとれます。
 したがって、虐待は一つの要因によって発生するというよりも、複合的な要因がからみあって起こると捉えるべきです。


平成19年度社会福祉行政業務報告(福祉行政報告例)結果の概況

1年間の全国「児童虐待相談の対応件数」は、約4万件。深刻さの比率が東京と同じだとすると、生命の危険があるようなケースは1200件にものぼる? 実際の虐待死が50名ほどということは、年間1150件の虐待死が未然に防がれている? 児相や警察が上げている成果はものすごいってこと?


学校等における児童虐待防止に向けた取組について(報告書)」(文科省

大阪府の学校は、まさに懸念されていた躊躇をしてしまったかのように見える。

児童相談所など窓口はいくつかあるのだが、かえってどこに通報したらいいのかわからない。


これは全国どこからでもかけられるホットラインに近いもの(軽度の虐待はともかく、深刻な虐待に遭遇する確率は、かなり低そうだけれど)。


「全国一斉子育て・虐待防止ホットライン」
全国共通ナビダイアル


0570-011-077


平日 午前10時〜午後5時


最初に電話料金についての説明が流れた後、各地の相談窓口につながります。


※一部、かけられない回線があるようです
 →ナビダイヤル:ナビダイヤルへ掛けられない電話回線 - Wikipedia


一方、Yahoo電話帳の利用もよさそう。「児童相談所 地名」で、全国に200カ所以上ある児童相談所か、類似の機関がわかる。


例:「児童相談所 三鷹


もちろん最寄りの警察でもいいし、行政に関わるのがイヤだというならば,多くはないが民間の団体もある(ほぼ県単位)。


日本子どもの虐待防止民間ネットワーク