PSJ渋谷研究所X(臨時避難所2)

はてダ http://d.hatena.ne.jp/kamezo/ からインポートしただけ

気になる広告


「おかしい広告」ではないかもしれないのだけど、「変な広告」かもしれないもの、少なくともぼくにとっては「不思議な広告」を我が家で発見。
詳細は「続きを読む」以下で確認して欲しいけど、少なくとも、広告を見る人の予備知識や補って読み取る力、以前渋研の連載でも採り上げた「納得力」に頼った、かなり変わった広告だと言えましょう。これって、もはやニセ科学一歩手前の珍しいサンプルなのかもしれないとさえ思う。


念のために書いておくと、この記事は「この商品がおかしい」という主旨じゃないです。「この広告は不思議だ」という記事です。もっと言うと「あなた、まさか、こういう類いの『なにも言っていないに等しい広告』を頼りに商品を選んだりしてないでしょうね」という話です。


あ、ネットで評判を探す限りでは、連続利用して数日から数週間程で疲れ目が楽になったなんて書いている人が多いようなので、別に製品としてはよろしいのだろうと思います。これも念のため(^^;;
しかし、メーカーの言をまじめに受け止めると「健康状態の改善のためのどのような効果があるとも、私どもでは言っていません」言い換えれば「なにも効果は期待しないでください」というように読めてしまうのです。このメーカー、あまりにもまじめなのでしょうか。それとも……??? 謎です。


引っかかったのは新聞の折り込み広告。目にいいということでよく取りざたされる果実の名前と目の意味の英単語を組み合わせた商品名。見るからに健康食品。広告にウソがあるとかいうわけではないので、商品名は特に伏せます。画像を見るとわかっちゃうけど。


bbe.pngこの広告を読み始めたきっかけは、隅っこに「モンドセレクション金賞受賞」なんて書いてあったから(画像が汚くてすいません。いじってるうちにやぶいちゃったし・汗。ちなみモンドセレクションの部分は隅っこだったので画像には入ってません)。
「え? モンドセレクションってお菓子の賞じゃないの? 少なくとも健康食品としての質を問う賞じゃないでしょ?」なんて思って(これはまあ勘違いだったと後にわかる。詳しくは末尾参照)、詳しくチラシを見始めた。そしたら、あらびっくり。健康食品としか思えない商品なのだが、どこにも効能も根拠もほとんどまったく書いていないという一風変わった広告だったのだ。なんだか健康食品だということさえどこにも書いていない。


もちろん、法的には効能をうたわないこと自体はなんの問題もないに違いないし、効能をうたわないからには根拠が書いてなくてもおかしくないわけだけど、でも、これ健康食品か機能性食品なんでしょ? これっていったいどういうことなのだ?


広告の内容は、片面が「お母さんに勧められて利用するようになり、毎朝の習慣になったら調子がいい」という主旨のユーザーの体験記事。もう片面が製品説明で、製品説明の側は下記のサイトとほぼ同一の内容。
www.blueberryeye.co.jp/shopping/bbe_kihon.html


ふんいきとしては「健康に良さそう」な感じがビシビシと伝わるようにはなっているのだが、例えば商品名から予想されるような「この果実に含まれている成分は目にいいと言われている、それを多量に含んでいるので疲れ目の回復などが期待できるよ」というようなことはどこにも書いていない。
「このような方におすすめ」として「パソコン・携帯メールをよく使う方」「車の運転をされる方」「TVゲームを長時間するお子様に」「TV・ビデオ・読書の前に」と書かれている。途中から人じゃなくなってるじゃん、とかいうツッコミはさておき、これってほとんどの現代人に当てはまるよね。で、どう見ても「目を酷使する人や酷使するときにオススメ」って言いたいんだよね?
だけど冒頭のコピーも「新聞の小さな文字、テレビやパソコンの画面、携帯のメール/クリアではっきりしていますか?」と書いてはあっても「クリアではっきり見えていますか?」とは書いていない(文字量として「見えていますか?」では入りきらないのだとしても「見えますか?」だったら入るもんね)。不自然じゃないか?


体験記事の部分でも、目にいいというようなことは明示されない。「しょぼつき疲れ」「疲れ」「調子が良くって」という表現は出てくるのだが、それが目の疲れや目の調子がよいのだというふうに明示はされていない。「しょぼつき」は目に特有の表現だけど、それでも「目の疲れ」などとは書いていない。それどころか「健康にいい」とさえはっきりは書かれていない。およそ、これを利用し続けることを「健康習慣」と呼んでいるだけだ。
バリバリの広告にしておいて「やっぱり口コミは確かよね!!」は失笑してしまうけど、まあそれは愛嬌ってことでここではスルー。しかし口コミはじめ「身近な方の体験が」だの「ご自身の体験」だのといいながら、「最近よくコマーシャルでも見るから」というくだりも読むに、消費者を安心させそうなことはキチンと織り込んでいる。手堅いと言ってもいいでしょうね、うん。


有効成分と思われるあれこれについても、「こういう効能があると言われている成分だ」といったことは明確には書かれていない。アントシアニンの説明は「青紫色の天然色素でポリフェノールの一種」、新配合だというアスタキサンチンは「サビつきに働きかける赤色の天然色素。細部にま届くから云々」だという。天然色素だからなんだっちゅうんだ。合成着色料は使っていません、っていう文脈じゃないのよ。「サビつきに働きかける」ってどういう意味よ、「細部まで」って、どこのなにのことよ。人体ってほっとくと隅々までサビるんですか?


薬事法とかそういうのに引っかかるのを避けているのかなとも思うし、うちのカアチャンに言わせれば「この果実が目にいいとかポリフェノールが体にいいなんてことは、いまさら言うまでもないってことなんじゃないの? ビタミンが体にいいっていうのと同じで」ってことなのだが釈然としない。その意見もわからなくはないのだけど、例えばビタミンで最も有名なのはCかなと思うけど、それでさえ「ビタミンCをたくさん含むからこういう面でいい」みたいなことは書くもんじゃないのか? 自分のライター・編集者家業の経験から考えると、この手の製品の原稿を書くときには、有効成分とその働きについては掲載必須の項目として要求されるんじゃねえかなあ。広告って、そういうもんじゃないのかしらん。


というわけで、そういう感覚でこの広告を見るととても不思議なのだ。とても慎重に「目がどうだ」「健康にどうだ」とか「こういう成分がこういう働きを持っている」とかいうことを書くことを避けているように見えるのだ。
単に素人仕事だなあというには、あまりにも周到で完璧に避けているように見える。体験記事での体験とコマーシャルの扱いとかもね、バランすがとれすぎている気がする。
もちろん別に悪意はないのかもしれない。いや、意識的でさえないのかもしれない(そうは思えないけど、意図的だという証拠はない)。でも、「遠回しに目や健康に効きそうに言いながら、その実そうとはっきりは書いていない」という状態はかなり気持ちが悪い。少なくとも手の内を明かさないようなやり口は、品格がないと言っていいでしょう。


それとも、最近、医薬品ではない食品の広告は、そこまで制約されるようになったんでしょうか。もしそうなら、かえって気味が悪いんで、官庁方面も考え直してくれ。多分、そういう事情じゃないとは思うけど。


ところで、広告を読むきっかけになったモンドセレクション。この賞は、調べてみたら別にお菓子「だけ」の賞というわけではなかった。ワインの賞として始まり、お菓子などの食品に対象が広がり、今では食品以外まで対象を広げている。一等賞を決めるとかいうのじゃなくて、一定以上の高いクオリティにある商品を顕彰するという賞みたい。


公式サイト(http://www.monde-selection.com/en/selection.html)を見ると、
Wine Contest、Spirits & Liqueurs、Beers & Other Beveragesの酒類、Food Products、Sweets Products、Cereal based Products、Diet & Health Productsの食品関係、Cosmetic & Toiletries、Tobaccoの非食品関係を扱っているようだ。


日本語のサイトでは下記が詳しい。
http://monde.client.jp/monde/
メーカー系のサイトでは下記。
http://www.marushinhonke.com/monde.html
モンドセレクションについて説明しているメーカー・サイトは多い。自社製品が受賞していることを喧伝したいというわけなのだろうけど、ほかのサイトだと「食品の賞」とか「お菓子の賞」って書いてあるところが多い。それじゃちゃうやんけ。
もひとつ。なんでみんな公式サイトにリンクしてないんだろうね。英語だからか?


ところで、この商品はなに部門で受賞したんでしょうかね。当然ダイエット食品・健康食品部門だと思うのだけど、まさか一般食品部門やお菓子部門じゃないよな(爆)