オーストラリアのメディアを震撼させた「カルロス事件」をご存知だろうか? 数日前にテレビでやったらしいのだが、ぼくは知らなかったんで、ちょっとググってみた。
「#284 隠し事・ウソ スペシャル」(ザ!世界仰天ニュース 2008年2月13日 魚拓)
快哉を叫びたいような「とんでもねえ話」だった。
簡単に言ってしまうと、こんな話。
1988年、オーストラリアにこつ然と登場した霊能力者ホセ・アレバレズ。さまざまな不思議な能力を発揮するホセと彼が呼び出す霊「カルロス」に、メディアも視聴者も熱狂した。
しかし、間もなくその霊能者は自ら正体を明かす。彼は霊能者でもなんでもなかった。ベテラン・マジシャンで懐疑主義者として知られるジェームス・ランディが、ホセを霊能者として振る舞えるように仕込んだだけだったのだ。
彼らの目的は、「大衆やメディアがいかに騙されやすいかを証明する」ことにあったのだ。
ランディは非難されるとこう語ったという。
「アメリカに1本確認の電話をすれば全てが嘘だとすぐに分かるような簡単なウソ。でも誰一人として確認をしなかった。騙されるマスコミも非難されるべき」
ランディたちの用意したウソは、ごく底の浅いものだったのだ。周到に用意したのは「見ただけではマジックと見破れないようにふるまう」という点だけだろう。
メディアに少しでも関わる者であれば、このケースでのメディアの責任については反駁できまい。
「仰天」では、番組の終わりにゲストが「不思議なものがあることを信じたい」といった主旨の発言をしていたという。バランスをとるつもりだったのか、感傷なのかわからない。が、こうした番組で、なんの留保もなくそうした発言をするのは不用意ではあろう。
しかしそれでも、こうした番組が放映されることは歓迎したい。単にマンネリを避けるためだったのだとしても、あるいはランディを悪役にしたかったのだとしても、ね。
後述のブログ(また別の情報も得られる)でも指摘されているが、マスメディアは、ランディたちのこしらえた、ちゃちなチラシをうのみにして、なんの確認もしなかったらしい。誰も「本人たちが自称しているだけだろ?」とは考えなかったわけだ。
「マスメディアは、必ずしも情報の裏をとらずに垂れ流すことがある。とくに報道番組以外では要注意」ということぐらいは言えそうだ。
ランディのとった方法は、バラエティ的に言えば「国民とメディアを相手にしかけたドッキリ」、報道番組的に言えば「論証のための大がかりな捏造」だ。方法として適切かどうかについては議論の分かれるところだろう。ぼくも、にわかにはどちらとも意見を決められない。
オーストラリア側の仕掛人であるテレビ番組プロデューサは更迭されたという(日本の捏造番組や霊能番組、血液型番組などでは、どうなんだっけ? 問題にされるとやっぱり更迭されたのかな?)。
■カルロス事件についてのその他のソース
これまでカルロス事件について、ネット上で日本語で詳しく読めるものは、あまりなかったようだ。ちょっと探してみた範囲では下記ぐらいしかなかったもよう。
カルロス ``Carlos''(SkepDic 日本語版)
マスコミ報道姿勢の検証が行われた(科学・オカルト・悪徳商法 2004/9/2)
後者では
オーストラリアのテレビ局や新聞は、アメリカでの成功について全く調べたりもせず、ランディが配ったパンフレット通りの報道をしたようです。なんて辛辣に書かれている。
「カルロス事件」は、もちろん知っている人は知っている話で、ネット上での議論などでも行為の是非を含めて断片的に言及されることはしばしばあったようだ。うーん、気づかなかった。
■ジェームズ・ランディ
ジェームズ・ランディは懐疑論者として有名で、あちこちで言及されている。特にSkeptic's WikiやASIOSで紹介されている動画はオススメ。
懐疑論者紹介、ランディのサイキック・チャレンジ(いずれも「超常現象の謎解き」)
ジェイムズ・ランディ (James Randi)(Skeptic's Wiki)