PSJ渋谷研究所X(臨時避難所2)

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学び方に応じた教育方法


先般、吉田新一郎(Learnscape代表。プロフィール例amazonでの著書一覧)という方の、教育に関する話を聞く機会がありました。そのなかに、日本の高専や大学の教員の質問に対して、フィンランドの大学教員が「学び方に応じた教育方法を努力している」と答えたという話がありました。不正確な話になりますが、その話を記憶で再現しつつご紹介します。


高専や大学の先生方の質問は、「7、8割もの学生が居眠りをしているような講義が、フィンランドにはありますか?」という主旨のものだったようです。それに答えて、「そういう講義が絶対にないとは言えないけれども」と前置きがあり、「学び方に応じた教育方法を努力している」と言った、というのです。


彼らは、人間にはそれぞれに適した学習スタイルがあると考えているのだそうです。講義スタイルがいい人もいれば、対話スタイルがいいという人もいるし、集団でなにかをするのが向いている人もいる。


この話をしてくれた吉田氏は「自分は空間認識は得意だが、文章で理解するのはとても苦手」と言っていました。たとえば一度行った場所への道順などは決して忘れない。忘れようとしても忘れることができない。しかし、道順を言葉で書かれても理解できないというのです。だから「学校時代に3次元的に教えてもらえれば、もっとずっと早く理解できたはずだと考えている」というのです。


フィンランドの教育界では、そんなふうに、人それぞれに異なった「適した学習方法」があるという考えているという話なのです。


そこでフィンランドでは、大学入学時に個々の学生について「この学生にはどのような教育方法が適しているのか」を調べるための面接やテストを専門家が行い、その結果を担当する教員に伝え、教員はその学生に適した教授方法を腐心する……という話でした。


ここからはぼくの感想。実は、日本でも「いろいろな学習方法」は気づかれていて、実践されているんじゃないか、まずそう思いました。
グループ学習もあるし、吉田氏がいう「三次元的に」という方法だってありそう。たとえばマインドマップみたいなものが、そうじゃないかしら。KJ法とかいうのもありますよね。ワークショップでは、フセンにばーっとキーワードを書き出して、それを並べ替えて、なんてこともする。こんなふうに、いろーんな学習方法や考えのまとめ方、深め方が提唱されてきましたよね。


違うのは、「ぼくに向いているのはどれだろう」じゃなくて、「どれが一番いいのだろう」みたいな「誰にとってもいいものはいいはず」「みんな同じはず」という思い込みが前提としてついつい働くこと。文章を読むのが理解しやすい人もいれば、マインドマップがいい人もいて……というように、適性の違いがあるのだとは理解されていないように思います。


いまの日本の学校で、フィンランドのようなことがすぐにできるとは思いませんが、「人によって適した学習方法が異なる可能性がある」ということは、念頭においておきたいことだと思います。