PSJ渋谷研究所X(臨時避難所2)

はてダ http://d.hatena.ne.jp/kamezo/ からインポートしただけ

「貼るワクチン」ワクチンパッチの開発について少し調べてみた

昨日、こんな記事がはてブのホットエントリに上がっていた。

news.livedoor.com掲載媒体が中央日報だけで、ほかのメディアが扱っているようすがなかったこと、見出しにまで「注射の10倍の効果」なんて言ってるのに「なぜそうなるのか」の説明がないことなどから、眉唾なのでは?みたいな反応もブコメでは多々あった。
が、それ以前にこれはまだ動物実験段階なので、先の長い話になりそう。

んで、元論文はどんなんかいなと探してGoogle翻訳を通して読んでみた。

 

www.pnas.orgオレの脳みそではよくわからんところが多い(というか半分以上わからない)のだが、「効果が10倍」とかいう話よりも、「ワクチン・パッチは非侵襲的なのがいいよね」「3Dプリンタで作れるのがいいよね」みたいなところがメインなのかな、というコメントを書いた(治療や検査のためとはいえ傷を付けたり痛かったりするのを「侵襲的」というらしいと知っていたので、きっとワクチンパッチは「非侵襲的」でいいんだと思う。論文にもそう書いてあったかも。もうね、記憶がダメなんですよ)。

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で、1日経って、ふと「後追い報道とかあるかな?」と「ワクチンパッチ」で検索してみた。後追い報道はなかった。なぁんだ。しかし、この記事に食いついた三流メディアや個人ブログに混じって、ほかの大学などでの以前の研究の話がいくつもあった。あれえ? オレが知らなかっただけで、そうなんだ。びっくり。

じゃあ、この研究も「効果がでかいぞ」が重要なのかな?と思いつつ、次から次とナナメに読んでみた。端からリンクでお届けする。

まず今年6月。テキサス大が開発した(開発中?)の新型コロナワクチンでクイーンズランド大学がワクチンパッチを研究。

gigazine.net昨年4月。

www.nikkei.com新型コロナのワクチンパッチでも3番めなんですねぇ。んで、ここから先はまだ新型コロナが問題になってない時期なので、新型コロナのワクチンではない。ていうか、新型コロナが出てきたから始まった研究ではないんですね。

2017年7月10日。ポリオワクチンのパッチ。〈国立感染症研究所大阪大学大学院薬学研究科、阪大微生物病研究会、富士フイルムの4者〉

www.yakuji.co.jp同日、2017年7月10日。インフルエンザ。予備的研究。ジョージア工科大学など。

www.qlifepro.com2016年。阪大、コスメディ製薬、奈良県立医科大など。特に「なんのワクチン」という話でさえないみたい(PDFです)。
岡田直貴《マイクロニードル技術を活用した「貼るワクチン」の開発》(精密工学会誌/Journal of the Japan Society for Precision Engineering Vol.82, No.12, 2016)

じゃあ、もうこの辺で打ち止めかな、と思ったらまだ遡れた。
2013年。〈多層マイクロニードル法は、裸のDNA注射をはるかに上回る免疫反応を体内で引き起こす〜室温で数週間、乾燥状態で保存しても効果が損なわれない〉なて出てくる。

www.natureasia.com

これ以上は遡っていないけど、2013年以前から研究が始まっていたんでしょうね。2013年からだって10年近い。今回のコロナ禍で、初めて実用化されて注目されてるmRNAワクチンだって、急に出てきたわけじゃなくてすでに30年の歴史があるって話を思い出すと、もっとずっと遡れてもまったく不思議はない。

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で、全部の記事を精読したわけではない(歯が立たない記事もあるし)けれども、どうも「低温管理とかしなくていい」という話と、「注射よりも効果が大きい」「副反応が少ない(あるいは小さい)」という話は、上記の記事のあちこちで見た(同程度というのも見たけど)。
低温管理が必要ないのは、このタイプのワクチンパッチ(マイクロニードル法による経皮ワクチンパッチ、というのかな)は「ワクチンが乾いているから」らしい。それだけで、ワクチン流通にはすごく大きな変化らしい。国際的な流通や、たとえば「ヘンピなところにも届けやすい」ってのも、とても大事だもんね。

効果が大きかったり、副反応が少ない(軽い)という理由は書いて……あったかもしれないけど覚えていない。

上記のどっかで「ニードルが折れて皮下に残る問題があったが、ワクチンでニードルを作ることで解決」なんて話も見たので、それと関係するのかもしれないし、だとすると、どれでも3Dプリンタで作れるわけでもないのかも、とも思う。

しかし「温度管理が容易」というのは、ワクチンパッチに共通しているのかもしれないですね。

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「なんでこうなるのか(効果が大きかったり副反応が少なかったりするのか)」という件は、精読すればちゃんと書いてあるのかもしれないけど、以前きくちくんに「医療は機序(どうしてこうなるか)は二の次で、どうすればどうなるか、つまり効くか否かが最も大事」という話を聞いていたので「まだそこはわかってない、今後の研究を待つしかないのかも」とも思うから、あまり気にしていない。

「実用化が近い」と言ってから何年もかかるのは普通のことだしね。