PSJ渋谷研究所X(臨時避難所2)

はてダ http://d.hatena.ne.jp/kamezo/ からインポートしただけ

『水からの伝言』に関するおさらい


渋研Xでは既に扱ったネタだが、以前の記事「kikulogで体験談募集」とからむので、『水からの伝言』問題をおさらいしておく。


江本勝水からの伝言』(波動教育社)という本がある。
http://www.hado.com/dengon.htm
vol.2も3も、おびただしい数の類書もある。その辺は、amazon.co.jpにあるkadzuwoさんのリスト「【真相?】 水は知っていた!! 【判明!】」に詳しい。


同書は、およそ以下のような主張をしている。

「ありがとう」と書かれた紙を貼った容器に入れた水を凍結すると、雪の結晶のような結晶が得られる。「ばかやろう」と書いて同様にすると、上記のような結晶は得られない。
地表の7割は水であり、人体も7割前後が水分だ。
だから水を大切にしよう。よい言葉遣いを心がけよう。
最後の部分は問題ないだろう。問題はそれ以前の部分、そして、両者が「だから」でつながることだ。


これは、水、すなわち無生物が言語をなんらかの形で理解する、あるいは言語には水の性質になんらかの影響を与える力があるという主張だ。これは物理学を根底から覆しかねない主張だろう。したがって、常識的には「噴飯もの」という反応をして終わりそうなものだ。
しかし、同書ではその仕組みを「波動」との関連で語っている。この「波動」は、同書の記述や筆者のWebサイトなどを見るといわゆる物理学の波動とは関係のない「なにか別のもの」としか思えないのだが、こうした言葉で語られることで「科学的な話なのかもしれない」という誤解を与える効果があるようだ。
また、同書では、結晶を得るために「実験をした」と再三語られている。その実験と称するものの内実に関わらず、「実験した」といわれることだけで「実証された」という誤解を与える効果もあるようだ。
その結果、同書は思わぬところにまでビリーバーを育てている。


この件については2005年2月号(幸か不幸か完売。実際の記事を読みたい場合は、図書館でも探して下さい)掲載の「渋谷研究所X」に、およそ下記のようにまとめたはず。

同書の主張は、非科学的とかいう以前の問題。
実験と称されているものは、手続き的にまったく不十分かつ不適切で実験といえない。
結晶写真といわれているものは、低温環境下で周囲の水蒸気が氷結する際にできる「気相成長」のようすを恣意的にピックアップしているにすぎない。
それでも信じると言うなら、それは信心の問題なので科学という立場からはなにも言えることはない。
だが、学校の教材としては下記の点で不適切だ。
理科的な観点からは、裏付けに乏しい思い込みないしは信念による主張を「事実」として教えるという誤りをおかすことになる。
道徳的な観点からは、結晶の形に美醜が存在することを根拠に「だからいい言葉を使いましょう」と指導するのは、「外見が醜いものは悪いもの」という非人道的な観念を植え付けることになる。
自然や人へ感謝の気持ちを持とうとか、自然環境へ人間が及ぼす影響を考えようとか、乱暴な言葉遣いや侮辱的な言葉遣いはやめましょう、という主張を否定するつもりは毛頭ない。
しかし、「こういうことがある」と科学的に検証された事実として喧伝され、それが学校でまで事実として教えられ、あまつさえ美醜と善悪を同列に扱うような道徳教育が行われているのでは、放置しておいてはいけないと考えている。


書籍中に掲出されている結晶写真は、同書中でも「50個やって数パターンしか成功しない」すなわち恣意的にピックアップしたものだと述べられているのだが、結晶の美しさに感動してしまい、感動してしまったために信じてしまった人がたくさん出ている。理性は感情の前で無力なのだろうか?


実は、しばらく前の本なので、もう世間でもとっくに忘れ去られているのかと思ったら、そんなことはなく、同書は20万部に届かんベストセラーになり、類書も続々と出ている。その結果、ビリーバーもどんどん増えているらしいことがWebからもわかる。
同書は最初は自費出版のようなものだったのだが、現在では著名な出版社から書籍もDVDも出ているという事情が、状況を悪化させているのではないかと思う。
さらに困ったことには、学校の授業で、同書の主張を事実として教えているという状況も生まれている。


『伝言』については、『トンデモ本の世界T』でも一笑に付されているようだ。
http://www.7andy.jp/books/detail?accd=31380978


『伝言』の主張の詳細は、前述サイトの内容見本ページでも確認できるし、ネットでいくらでも見られるので割愛する(下記のリンクを参照。検索すればさらにいくらでも出てきます。おそろしいこってす)。


以下に、誤謬を指摘しているWebページとその関連ページ、本家筋やビリーバー=信じちゃった人のWebページなどを並べてリンクしておく。


■誤謬を指摘しているページなど
▼「TOSSランド」(教育技術法則化運動)へのコメント(2003/02/03)
水の属性を研究しているお茶大の天羽氏のサイト「水商売ウォッチング」の一部
http://atom11.phys.ocha.ac.jp/wwatch/misc/comment_misc_06.html
ニセ科学入門:前述の阪大・菊池氏のWebサイトの一部
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/%7Ekikuchi/nisekagaku/nisekagaku_nyumon.html
▼kikulog:上記菊池氏のBlog「kikulog」のカテゴリ「ニセ科学
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/%7Ekikuchi/weblog/index.php?mode=show&date=20050525
▼Blog「それってホントなの?」: 総合的学習ではこんな授業が…
よくわからないが、多分「だます」「だまされる」ということを考察しているBlog
http://blog.so-net.ne.jp/mikimac_weblog/2005-05-10
▼診療日誌:2003年10月
医療法人くろき・ひろクリニックのサイト。10月6日(月)の項に言及がある。
http://www.hiro.or.jp/0310.html
▼ ■「心のノート」の扱われ方■集められた「一万人アンケート」/京都市「心のノート」考える会
京都教育センター季刊「ひろば・京都の教育」第133号(2003年3月)の掲載記事らしい。記事中に「『水からの伝言』を使った道徳教育」として、「第七回京都市道徳教育研究大会」で実践報告があり、資料の非科学性についての指摘が相次いだとの記述が見られる。
http://www.kyoto-kyoiku.com/hiroba2/hiroba133/annkeito.htm
▼教養の授業で波動と水結晶をとりあげた
山形大の先生方?のBlog「事象の地平線::---Event Horizon---」のエントリー。学生さんのコメントが興味深い。
http://www.cm.kj.yamagata-u.ac.jp/blog/displog/137.html


■パロディ
▼「水からの伝言 官能版」登場!
http://atom11.phys.ocha.ac.jp/uso800/2005/


■本家ならびにその筋
▼株式会社アイ・エイチ・エム
http://www.hado.com/
水からの伝言』の出版元。会社案内を見ても代表者名が示されていないが、同書の著者である江本勝氏の経歴には昭和61年に(株)アイ・エイチ・エムを設立したと書かれているので、多分、彼が代表なのではないか。ちなみに同サイトの江本氏の挨拶というか紹介というか、そういうページは下記。
http://www.hado.com/emoto/emoto-top.htm
▼同書の著者、江本勝氏の個人サイト
http://www.masaru-emoto.net/japanese/jpntop.html
▼Project of Love and Thanks to Water/水への愛と感謝プロジェクト
代表は江本勝氏。
http://www.thank-water.net/japanese/
▼波動スタイル.com:水の記憶の話
波動コミュニケーションズセンターのサイト……らしいのだがよくわからない。
http://www.hado-style.com/sub4.htm
▼+Hadoネット
同書などをデザインされた方の作った「波動のポータルサイト
お仕事紹介のページ「IHM NetDesign仕事実績」
http://www.plushado.net/guidance/ihm-netdesign.htm


下記「ビリーバーな人たち」「信じてしまった結果、講演などを実施した団体など」は、05年5月28日にGoogleで検索した結果10ページ近くから拾ったもの。掲出順はヒットした順。つまり、上のほうほど多数のサイトから参照されているページということになる。
数を上げることにはあまり意味がないようにも思うし、リンク数を増やすのはマイナス効果かもしれないとも思うのだけど、浸透度と根の深さを実感できるのでリストアップしておく。


■ビリーバーな人たち
リストの上のほうのページは、素朴に「すごーい」と言っている人が多い感じですが、下に進むと、いわゆるトンデモというかオカルトな感じのサイトが増えていきます。
▼〜水からの伝言〜(水が伝えるもの)
小学校の先生の、同書を使った授業の実践報告のページ
http://n-blieve.hp.infoseek.co.jp/mizukessyou.htm
水からの伝言 The Message from Water
中学校の美術の先生のWebサイトの一部
http://www.fsinet.or.jp/%7Ekaze/water/message/message.htm
▼愛と感謝、水からの伝言
気功師とは書いていないなあ……。よくわからないですが、「気功とスピリチュアル・ヒーリング」を組み合わせた療法を行うという方のサイト「気の里ヒーリング」の一部。
http://www.ne.jp/asahi/aquarius/messenger/books_002.htm
宮沢賢治からの伝言
「興譲文庫/霊性の人々100の智恵」というサイトの一部。
http://www.kojobunko.net/21seiki/13message.html
恋する惑星:『水からの伝言』世界初!水の氷結結晶写真
おそらく、ふつうの方の日記サイト
http://koiwaku.ameblo.jp/entry-a35d4dc8c89fb6325eb3c587cb06b3ef.html
水からの伝言
同書を使って小学校で行った道徳の授業の実践報告。
http://www4.ocn.ne.jp/%7Eyoshirin/seimei/mizu/mizu_dengon.html
▼よい言葉と笑顔にはパワーがある!−水からの伝言
同書と関連書を使って小学校で行った道徳の授業の実践報告。
http://www.d1.dion.ne.jp/%7Eyu_ki_ko/mizukaranodengon.html
▼「波動と水の不思議な関係」
元アイエイチエムの社員だった板垣宏征氏による「見えない・からだ学」の第6号。日本経営合理化協会 出版局のサイトの一部。
http://www.jmca.net/booky/netuniv/itagaki/hado06.html
▼水の結晶
神智学、神秘学などを扱う「ラピスラズリ研究所」のサイトの一部
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Labo/3163/crystals.html
▼さのさのさ 〜気が向いた時、Blogしよッ♪:超ーッ気持ち良いーッ
多分、普通の方の日記系BLOG
http://blog.livedoor.jp/dy_s/archives/16341011.html
▼いのちと水
お祭り用品の販売サイト「橋本屋どっとコム」の一部。環境を大事にしていることのアピールのようです。
http://www.hashimotoya.com/kankyo/inochi_mizu1.html
▼Creative Space:水にもいろんな顔がある…。
エコロジー関係の個人サイトのようです。
http://www.creative.co.jp/top/main16.html
▼「生活編 (5)言葉の力」
前出「波動と水の不思議な関係」の板垣宏征氏「見えない・からだ学」の12号。
http://www.jmca.net/booky/netuniv/itagaki/hado12.html
▼ドリーム・パワー:新年のメッセージ
ジョン・レノンに捧げるコンサートのサイトでの、あのオノ・ヨーコさんのメッセージ
http://www.dreampower-jp.com/peace/xmas_messege.html
▼<波動の時代>
自然・万物との共存を目指す探検隊のサイトの一部。
http://www5a.biglobe.ne.jp/%7Eikeike/sub2-9.htm
寺門琢己の「だから!カラダ!げんき!」: からだの記憶?腎臓救済指令(^o^)/
整体師?の寺門琢己氏のBlog。
http://terakadotakumi.cocolog-nifty.com/karada/2005/03/post_11.html
▼聖クルアーンと科学:水の結晶の秘密
イスラームの道しるべ」というサイトの一部
http://www.isuramu.com/quranscience/quranscience_6.htm
▼水が教えてくれたこと
浄水器「マザーガイア」を作ってる人のページ……かな?
http://ww5.enjoy.ne.jp/%7Ehatago/kessyou.htm
▼SAKE Symphony
小町酒造さんのサイトの一部。長良川という清酒の蔵元さんだそうです。
http://www.nagaragawa.co.jp/kura-oto.htm
▼水のお話
πウォーターなどの販売サイトのコラム
http://ww2.tiki.ne.jp/%7Em-koike358/water.htm
▼ま心を水に託して ガイアシステム
前述、浄水器マザーガイアのサイト
http://ww5.enjoy.ne.jp/%7Ehatago/gaiasystem.htm
▼IHMドルフィン:神のみぞ知るMRAコードの秘密
http://www.ihmdolphin.com/letter/mra-code4.htm
▼clubberia -Dance Music Archives-水の話
DJかミュージシャンかな?「EYE」さんのインタビュー
http://www.clubberia.com/5days/11/eye/2_index.php
▼リレーコラム64:「水」について
筑波記念病院のスタッフによるコラム
http://www.tsukuba-kinen.or.jp/column/relaycolumn/050111.html


■信じてしまった結果、講演などを実施した団体など
▼福岡市民大学講座
http://www.fukuoka-cc.com/
▼環境浄化セミナー in 松江
主催は「水の言霊の祭典実行委員会」だそうですから、正しい選択といえば正しいのかも(^^)
http://www.asahi-net.or.jp/%7Exa8m-adc/tirasi2000.7.23.1sjis.html
▼日本ミュージアム・マネージメント学会(JMMA)第8回大会
役員一覧を見ると大学関係者や科学者がたくさんいて、泣けてきます。
http://www.jmma.net/active/event1.htm
▼比叡の光
比叡山延暦寺さんの番組。京都放送東京MXテレビ新潟放送びわ湖放送スカイ・A 、ハワイ KIKUで放映している模様。
http://www.kbs-kyoto.co.jp/tv/hiei/
▼スピリチュアルTV.com Japan
小学校での30分にわたる講演が見られます。
http://spiritual-tv.com/peace&envirnment.htm
松原湖畔ギャリー創
写真展を開催。
http://www.koumi-kankou.net/matsubarako/g-1-mizutokoriten.htm


下記は、別のときに拾ったもの。
▼日記 みかんくらぶ 京都:水の結晶
道徳教育研究校の先生の日記。なんか職場の誰も疑問を持ってないみたい。
http://plaza.rakuten.co.jp/mikanclub/diary/2003-11-11/&e=9707
で、このBlogはなくなってしまっている模様。Googleのキャッシュでは見られる
▼文字の持つエネルギー
小学校での授業の実践報告。
http://www3.ocn.ne.jp/%7Esaitou/moji-energy.htm
ページ末尾の説明を拝見すると、この先生は、「これはいわゆる科学ではない」ということを熟知しておいでだ。授業者はその点を理解していなければならないとまで述べている。さまざまな意味で、「素朴に信じてしまった」ほかの数多の実践報告とは明確に異なるだろう。