PSJ渋谷研究所X(臨時避難所2)

はてダ http://d.hatena.ne.jp/kamezo/ からインポートしただけ

それなんてコピー食品


Interdisciplinary: ぎそう」経由で「極東ブログ: ミンチ偽装事件にボケたツッコミでも」を読む。


最初に「ぎそう」を読んだときは、「ミートホープ擁護論のような話があるのか?」と思ってしまった。そこまでの話ではないもよう。


でも、日本人の味覚の問題にしちゃう、いわんや、料理としてはあれで正解とでも言い出しかねないような極東ブログさんの書きっぷりは、釣りなのかもしれんけどあまりの低劣さに具合が悪くなりそうだ。毎度マスコミが盛り上がるのをくさしているコメントもありますが、それも「日本人の味覚の問題論」の伝で行けば、同様に「日本人のレベルの問題」と切り捨てられてしまうのでは。


しかし、発明としてはかばいたくなる、というのならばわからなくもないような気はします。ぼくなどの庶民にとっては「ほとんどの日本人は、牛脂を混ぜ入れた肉を食べて牛肉を食べたと思う」ということに気づいた点は、慧眼と映るのです。極東ブログさんのような鋭敏な味覚も豊富な食味体験もないワタシ。


わざわざ言うまでもないけれども、この事件は煎じ詰めれば牛肉のコピー食品の新しい作り方を発明して、それを真正の牛肉と偽称して納品していたというようなことだと思っています。これは、たんに偽物を本物だと偽って売った(うわ重言だ)だけの、出来の悪い詐欺に過ぎないというのがぼくの評価。発覚後の態度や、同じ社長がやっていたといわれる、ほかの表示偽装などを考え合わせると(そして、それが正しい情報なら)、よくて「損失を減らせる」、おそらくは「不当な儲けが期待できる」と気づいたからやっている利己的な行為に違いないことなので、あからさまで、かつぶざまな悪事です。
食べてもバレないというだけでは、芸としてはスマートさのかけらもないのでは。挽肉として売るのではなく、加工食品に使用するというところがバレにくくて秀逸と言えるかもしれませんが、盲点を突くとまでは評価できず、あまりにもストレートでしょう。技術革新の親戚や上出来な詐欺のように扱ってもらえるようなものではないと思うな。
悪質さという点では高得点ですけど。


「日本人がどうこう」という話に持って行くなら、ひとつ気がついた(あるいは気がつきかけている)ことがあって。


他の製品分野でも、もっと明確に「本家によく似た廉価版」というジャンルがありますよね。レーサーレプリカ(バイク)とかコピーモデル(ギター)とか。しかし、それはある程度成熟した市場では、明確に本物とは区別され、それでも価値を認められて定着するのです。
一方、日本の食品業界では、古くから「もどき」がたくさんありました。「がんもどき」もそうかな。比較的最近はニュー・コンビーフ(加工肉。馬肉をブレンドしたコンビーフ類似品→Wikipedia)、カニ風味かまぼこ、卵を後から挿入した子持ちししゃも、類縁でもなんでもないのに、見た目や食味が似た種類の魚と似た名前で流通する輸入魚などなど。人造いくら(これは釣りエサかな?)やキャビア風食品などのコピー食品もありますね。
海外はよく知らないけど、ニューコンビーフは日本独自の現象の模様。がんもどきもそうだよね、きっと(^^;; 合成甘味料や着色料などは世界中で使われているだろうから、どこでもあるのかな。まあ中国あたりには、似たような伝統がありそうですな(なんか、お肉にそっくりな植物性の食品とかあった気が)。
でも、まあほかはわからんので一応日本限定。
日本ではこういう「もどき」は歴史が古すぎて、また広がり過ぎていて、まぎらわしくすることにルーズなのかもしれないとか思う(中国の知的財産に対する理解を前近代的とバッシングする人もいるけど、日本だってこの方面では似たり寄ったりってことですね)。近代以前からの「食べて同じような感じなんだったらいいんじゃないか」というような。
しかし、こうした製品がまぎらわしい表示をされていて問題になる……などという事例は繰り返しありました。「似ていて安い」のでさえそうなのですから、でボクよりも年上っぽいからそれを知らぬはずもない社長さんがアレを牛肉として売ったら、そりゃ悪質です。


これは確かめようもないことですが、そんなどこか「まぎらわしさ」に寛容な「日本の食品業界」の風潮が背景にあり、それがあの社長の反倫理性を助長したとかいうことはあるかもしれない、なんて思います。
今の日本人は本物志向などと言われることもあるのですが、その内実を考えてみたくなるような気もします(多分しないけど)。


どちらさまの本題ともズレまくってるので、TBなし。