PSJ渋谷研究所X(臨時避難所2)

はてダ http://d.hatena.ne.jp/kamezo/ からインポートしただけ

大学とかのWebサイトを考える2【追記あり】


大学とかのWebサイトを考える1」の続きです。
今度は「学校のドメイン下で、教職員が独立したコンテンツを公開すること」について考えてみます。


■個人ページの形態を考えてみる
まず、ごく基礎的な情報として、少し広い範囲から状況を整理してみましょう。
掲示板」でもブログでも同じなのですが、個人がWebサイト(以下、個人が比較的自由に編集できるWebページという意味で「個人ページ」と呼びましょう)を設置しようと考えたときに、いまはかなり幅広い選択肢があります。代表的な方法はこんな感じでしょうか。


(1)「そこら辺の無料ブログ設置サービスなどを使用する」
(2)「プロバイダの提供するWebスペースを使う」
(3)「独自にドメインを取得してサーバーを立てる」
(4)「所属組織のドメイン下に設置する」


(1)から(3)は、ほとんど誰でもできます。(4)が選べるのは、少数派かもしれません。これを選べるのは(a)組織の代表、(b)タレントなど芸能人、(c)研究者や大学の教員といったところでしょう。


それぞれに、コストや匿名性、安定的な運用なんていう面で違いがありそうに見えますが、実はそれはしばらく前までのことであって、今どきではコスト面以外ではそうでもありませんよね。原理的な違いではない部分は、違いを出すも出さないもサービス提供者次第。つまりサービスを選ぶ人次第になっちゃっています。言い換えれば、使う人のスキル次第ですね(08/01/04追記:この辺は次の記事でもう少し具体的に考えています)。


情報の信頼度に関係がありそうな点で、匿名性について考えてみましょう(私が「匿名の度合いと信頼性が直接関係する」と考えているわけではありません。一般にそう考えられていそうだ、ということです)。
個人の属性=本名や所属といった「ユーザー情報」は、自分がサイト内のどこにも書かなければ「それなりに」隠せそうです。しかし、権限を持った機関がサービス提供者に確認すれば、ユーザー情報は開示されます。ただ、(1)の無料サービスの場合、「本当の情報なんか登録されてないかも」という疑問がありますね。(2)はネットへの接続手段を提供されている業者なら、支払いも生じるわけだから、(1)よりは「本当のユーザー情報」の可能性が高そうに見えます。
(3)「独自にドメインを取得してサーバーを立てる」というケースは、ふつうにやったら実名むきだしに近いことになります。whoisデータベースで検索すれば、ドメインの持ち主が丸わかりですから。しかし、サービス提供者によっては持ち主の情報は出さずに、サービス提供者のプロフィールで登録していることがあります。その場合は、(1)や(2)と同等に、比較的高い匿名性を得られます。海外のサービス提供者の場合、日本からの問い合わせはしにくいでしょうしね。
(4)「所属組織のドメイン下に設置する」は、実名で、しかも所属を明らかにしながらの運用となるわけですから、一部の例外を除いて匿名性はないに等しい。「一部の例外」というのは、(4)を選べる(a)組織の代表、(b)タレントなど芸能人の場合です。代表自身の都合や組織の都合で、恣意的に情報を操作できるからです。特に、小さな組織での(a)組織の代表の場合は、事実上(3)「独自にドメインを取得してサーバーを立てる」と変わらないことに気づきます。逆に、(c)研究者や大学の教員は、その組織の運用ルールを無視することは困難ですから、ユーザーが自分のユーザー情報の開示程度を自分でコントロールすることもまた困難です。


こうして並べてみると、本人がサイト上で開示していなければ、見かけ上の「匿名性」には大きな違いがなさそうです。実際に異なるのは「ユーザー情報の確認のしやすさ」や、そこで明らかにされている(あるいはされ得る)「ユーザー情報の信頼度」ですね。
たとえば、(1)〜(3)の方法で実名を示して個人ページを運用していても、その真偽をビジターが判定することは難しいでしょう。
「ユーザー情報の信頼度」が最も高いのは、(4)「所属組織のドメイン下に設置する」のケースでの(c)研究者や大学の教員のようです。


■教育に関する情報を得られるWebサイト
教育機関や教育に関する研究を行っている組織のほとんどは、いまやWebサイトをもっています。
そこに所属する教職員が、その組織のWebサイト内にプロフィールの紹介以上の内容を持った個人ページを公開しているケースは、およそ大学のものに限られています。
多くの場合、たとえば「ヤマダ教授」がやっている「ヤマダ研究室」のトップページがあり、その下に、あるいはそれとは別に教職員の個人用として用意されているディレクトリ(!)に「ヤマダ教授のページ」がある……なんていうパターンが多いようです。


教職員は大学などの組織下で情報発信しなければならないという縛りがあるのかというと、そうではないようです。実名を明かして個人ページをプロバイダや無料サービス上に公開している研究者や教員も、無数にいます。技術的な制約(与えられている容量、CGI等のアクティブコンテンツ設置の可否、メンテナンスのしやすさなどなど)があるためとか、内容的に考えてとか、理由はいろいろでしょう。
外部の個人ページと大学のページとが相互にリンクしていることも多いようです。
また、上記のような方々でも、個人ページを匿名で運営することもあるようです。話題の選び方(趣味、所属組織や学生、国の方針などに対する愚痴、個人的な話など)のために実名にしたくないとか、単にシャイなためとか、これもいろんな事情があるでしょう。
匿名だからすべてが詐称とは限らないでしょうから、「どの選択肢でも選べる」というのが現状と言っていいでしょう。


大学当局が全体を直接管理する方向に進まなかった理由は、いろいろ考えられます。
●教育活動へのネットが活用が、大学では早くからなされた
 →課題を研究室のページで出す、学生からのレスポンスをネットで受ける、etc.
●研究内容やその発表を、大学がコントロールする慣例がない
最も大きな理由は、インターネットの発展が、研究活動と密接に関係していたことに由来しているかもしれません。個々の研究主体がリアルタイムで情報を発信していかなければ、WWWを介してオンタイムで成果を相互に参照できるとか、研究活動がリンクして行くとか、そういうWWWが提供するメリットの基礎的な環境がそもそも実現しなかったわけです。


逆側の典型例のひとつに、小中高等学校によるWebサイトがあります。
ここではすべての情報を学校が管理するのがふつうです。実際には、個々の教員が異なる教育観・児童(生徒)観・職業意識をもっていてもおかしくないわけで、教育現場ではそれがある程度は認められているために「担任が教室の王様」で「校長も具体的な実践には口をはさめない」みたいなことが言われているわけです。しかし、そうした個々の教員のビジョンや実践を、学校のWebサイトのなかで表明することは、ほとんどの場合には認められていないのが実態です。
おかげで「小中高等学校って、いまどうなってるんだ、教員ってなにを考えているんだ」みたいなことは、教員の個人ページが重要かつ主要な情報源になっています。しかも、そのほとんどすべてが匿名で運営されています(例外もありますけどね)。有志の集まりによる研究会などによる情報もありますが、数は多くありません。公的な取り組みとして行われている研究会もたくさんあるのですが、こちらはほとんどWebには情報がありません。
考えようによっては、ちょっと奇妙な事態だと思うのですが、多くの方は疑問に思わないか、思っていてもその旨を発言されることはあまりないようですね。


まとめると
●教職員の個人ページでは、考えられるすべての形態が利用されている
●大学の教職員の場合、大学サイト内に個人ページをもっているケースはふつうに見られる
 →それ以外の方法をとっているケースや併用しているケースも珍しくない
●大学以外の教職員は、匿名で個人ページを運営しているケースが多い
となるでしょうか。


上記は定量的な調査ではありませんが、少しネットで調べものをしたことのあるなら、誰でも同じ印象をもっているのではないかと思います(匿名ページが本当に教職員なのかを調べるのは困難かも)。


「3」では、それぞれのメリット、デメリットを考えてみます。
(どこまで続くんだ・汗)