PSJ渋谷研究所X(臨時避難所2)

はてダ http://d.hatena.ne.jp/kamezo/ からインポートしただけ

共同出版商法を知っていますか?


先頃、新風舎という出版社が民事再生法の適用を申請したという報道がありました(1/20追記:1/18付け報道によると破産が決まったようです→asahi.com新風舎、破産手続きへ 支援交渉まとまらず」)。


Google Nes


ニセ科学とは関係ありません。ロジックとしては似てると思うけど。


mixiの日記で上記に触れたら、意外に「共同出版商法」そのものが知られておらず、「自費出版」と区別がついていないのだということに改めて気づきました。
報道でも「自費出版の」と書かれているし、「新風舎商法」とか言われて裁判が起きたときもそこまで踏み込んだ説明のない記事が大半だったので無理もないのですが。


というわけで、ちょっと解説。


まず注意。
少なくとも、自費出版を手がけている小出版社には、地方で細々といい本を出しているような良心的な会社がたくさんあります。自費出版=危険、では決してありません。


次に、今回民事再生法の適用を申請した新風舎のような営業スタイルは「共同出版」「協力出版」などと呼ばれています。自費出版との最大の違いは、自費出版では出版社は本を作ってくれるだけで、売ってくれない(少なくとも、積極的に売ってくれると期待することはできない)のですが、共同出版協力出版の場合はそうではないようです。


それから、「新風舎商法」などと呼ばれたせいで、新風舎個別の問題という見方をしている人が多いのですが、「そうではなくて共同出版全体が抱えている問題ではないか」という指摘もあります。


しかし、ぼくが少しばかりでも調べたことがあるのは「新風舎商法」だけなので、その点についてはまったくわかりません。
原理的には問題のない「共同出版」もあってもおかしくないと思います。しかし、後述するような契約内容やその後の契約の履行状態などが、新風舎単独の問題なのか、共同出版協力出版を名乗るところは似たり寄ったりなのか、ぼくには全然わかっていません。


さて、以上を踏まえたうえで下記をどうぞ。


自費出版でも共同出版でも、結果として著者は「原稿とお金を提供」して、自分は「できあがった本を手に入れる」ことになります。一見すると同じですが、次の点が違います。


著者は出版社と「共同出資者としての契約」を結びます。契約では「著者は制作費を、出版社は広告・営業・販売の費用を負担」「編集作業は出版社が行う」という内容になっていることが多いようです。
つまり、著者が出版社から買うサービスは「編集」だけです。


編集という仕事には、クリエーティブな作業というか原稿整理や校正などの実務と、デザイナーや組版DTP業者、印刷製本などの制作業者との仲立ちという仕事の2つの側面があります。ということは、「著者が制作費を負担する」と言っても、実際には編集者=出版社がすべての段取りをすることには代わりがありません。


これだけでは「共同出版はマズい」とは言えません。契約通りに事態が進行すれば、ぜんぜん構わないわけです。webを中心に、「新風舎商法」として、それはマズいんじゃないのと言われているところは、ざっと書き出すとこんな具合です。


  • 「入選すれば本が刊行される」という名目のコンテストをたくさん行い、その際、落選者に「惜しくも選には漏れたが、いい作品なので出版しないか」と片端から声をかける(らしい。証言者多数)
  • 勧誘時には「全国で数百の書店で売る」と言いつつ、そんなに多くの店では売っているようすがない(らしい。証言者多数。一説によると説明の1、2割程度のお店)
  • 制作費用として100万〜200万出資させるが、外部へは極端に安く委託している(らしい。一説によると他社相場の4〜5倍かかるとか)
  • 原稿を渡しても、なかなか作業が進まない(どひー、耳が痛い)
  • ほとんど編集らしい編集がされていない(らしい。証言者多数)
  • 出来上がった本は、売り切れても増刷してもらえない(らしい。証言者多数。提訴の案件で出て来てる)
  • そもそも契約部数の7、8割しか印刷していないケースが確認されている
  • 最初の話よりも高額な出資を求められたと言っている人も多数
  • 「よそに移す」と言っても、なかなか応じない
  • 新風舎と著者の契約が、「事業者間の契約」となっており、著者は消費者としての保護を受けることができない(または困難)
などなど……。


新風舎は、昨夏から経営不振が伝えられており、「やっぱり」との声もあります。しかし、倒産して解散するじゃなくて民事再生法が適用されるとなると、なにがどうなるんだという不審の声もまたあります。共同出版商法では碧天舎がすでに倒産しており、似たような商売をしているところで残っているのは文芸社だけという状況……なのかな? 先行きは、まだまだ不透明です。


JANJANに特集があります。


共同出版協力出版自費出版問題(日本インターネット新聞JanJan
http://www.news.janjan.jp/media/0710/0710040417/1.php


さらに下記あたりが大変くわしいブログですが、リンクしたエントリだけじゃなくて、ほかのエントリまでふくめて読まないと上記のようなことは出てこないかも。


新風舎の倒産に関しての私的見解(藤原新也
http://www.fujiwarashinya.com/talk/index.php?mode=cal_view&no=20080108


共同出版問題とジャーナリスト(鬼蜘蛛おばさんの疑問箱 - 松田まゆみ)
http://onigumo.kitaguni.tv/e463389.html


出版界だけではなく、報道=マスメディアの問題だというのが松田さんの見解ですね。


1/12追記:松田さんのブログは、1日前のエントリ(下記)の方が適切だったかも(汗


新風舎の倒産と共同出版問題
http://onigumo.kitaguni.tv/e462471.html