PSJ渋谷研究所X(臨時避難所2)

はてダ http://d.hatena.ne.jp/kamezo/ からインポートしただけ

古今東西の感染パーティには、本当に「一理ある」のか?


参考:


#2009/05/14追記
#このエントリを読むと、なんだか「いわゆる勘違いの一種」に見えるかもしれない。
#そういう側面もあろうが、末尾に紹介したホメオパシー関連については、それでは足りない。
#勘違いと同一視してしまっては、あるいは誤解とさえ言えるかもしれない。
ホメオパシーがらみの感染パーティがもつ意味については、下記エントリに詳しい。

「感染パーティ」は日本でも珍しくない?

インフルエンザではないが、日本にも古くから似たような習慣がある。小児期に感染することで免疫を獲得することが知られている感染症では、現在もしばしば「もらいに行った方がいい? どうしよう?」と話題になる。

実際には、「予防接種を受けている方が重篤にならない可能性が高い」、そして「予防接種自体のリスクは予防接種なしで罹患した時のリスクに比べればかなり小さい」と考えられている。実際に罹患すれば予防接種よりも免疫が強いというのは本当だろうが、たとえばぼくは子ども時代に何度もおたふく風邪にかかり、医者が首をかしげていた。そういうことだってある。


また、発症した子どものところに遊びに行っても、すでに感染しやすい時期は過ぎていることも多い(水ぼうそうなどでは感染力が強いのは発症の数日前)。そもそも一つ屋根の下で生活していてさえも、うつらないことだって珍しくない。体力が衰えているオトモダチのところに足を運んでも、得られた結果はオトモダチをさらに疲労させただけ、ということになるかもしれない。なによりも、こうした「もらってくる」風習は、もともと「誰もが予防接種を受けられるようになる前のもの」だということも、思い出しておく必要があるだろう。

多くの医師は「感染パーティ」より予防接種を勧めている

水ぼうそう等の感染症の場合、当然ながらおおかたの医師は予防接種を勧めている。


http://www.nagoya.aichi.med.or.jp/kenko/health_n/tokushu/0502tokushu_1.html

乳幼児と高齢者の感染症対策 ヘルシーなごや34号(2005年2月発行)より
名鉄病院予防接種センター 宮津光伸部長に聞く


(略)
 かかる前に予防接種で必ず免疫をつけておきましょう。なかにはかかった方がいいと思いこんでいる困った方もみえますが、わざわざワクチンを作ってまで予防しなければいけないほど大変な病気であるということを真剣に理解して対処してください。あなた以外のお子さんはかかりたくないと考えていますから、かかってしまったら保育園などは休ませてしっかり治療してください。


いったん広まってしまった場合、それが尾を引くことを指摘している場合もある。
川崎協同こどもクリニック

予防接種
危険な病気の防波堤


(略)
 予防接種とはわざと体内に、弱くした病気の原因となるウィルスや細菌(これをワクチンといいます)を注射して、免疫機能を利用してその病気にかからないように準備をしているのです。なぜ、そんなことをわざわざしているかというと、予防接種を行っている病気の多くが、かかってしまったときに有効な治療法がなかったり、命に関わるような症状や後遺症を残すためです。
 ワクチンが開発されたことで、過去に恐れられていた多くの伝染病の流行が減り一般の人にはそのような病気は地上から消え去ったと錯覚させるまでになりました。しかし、これまで忘れられそうになっていた病気が突然流行することも時々起こっています。日本でも70年代に三種混合ワクチンの一時中止により、1979年に全国で百日咳が流行しました。この流行の後、以前と同じレベルに百日咳がなくなるには5年近くかかりました

ましてや「新型ウイルス」ではリスクが未知数では?

医師の中にも、いろいろな人がいる。したがって小児科医でも水ぼうそうなどは「もらうことに一理ある」と言う人もいる(有料会員以外は回答本文は読めないが、標題から肯定的回答らしきことがわかる。また検索語によっては一部の回答が読め、小児科医を名乗る回答者が上記のような回答をしていた)。


しかし、「新型ウイルス」には、病態がよくわかっている水ぼうそうおたふく風邪などとはまた別のリスクがある。ぼくは素人なので当否はわからないが、感染者数を増やすことが変異の可能性を高めるとして危険視する意見もある。そもそも新型ウイルスだけに、その特徴は定かにわかっていないのだ。感染を広げることが仮に免疫を広げることにもつながるとしても、同時に社会への負担やリスクも増大させる。そんなものにわざわざ感染することに、どれだけの利点があって、どれだけの危険があるのかを検討するのは、かなり難しい(言い換えれば、「一理ある」ぐらいで採用するのは軽率だ)。


下記のブログ記事もかみしめたい。

便乗商法は、軽率なだけではなく悪質

lets_skeptic氏が感染症パーティと代替医療の親和性について指摘している。


ホメオパシー等による代替医療や民間療法の宣伝道具としてこうした事態が利用されるのは、さらに嘆かわしい。


マクロビオティックも民間療法的なアプローチに踏み込んでいるようだ。


「免疫」はなんだかある種のマジカルワードとなっているかのようだ。
そういえばkikulogでは、健康食品で免疫能を高める方法はどうかという質問をしている方もいた。免疫云々よりも健康食品に過度な期待は禁物という順当なコメントが返されていたが。


健康食品等でも海外では多くのインフルエンザ便乗商法があり、国家機関からの警告を受けている。


業者はともかく個人の方々は、あるいは自分が「よりよい」と信じる方法を勧めているだけかもしれない。しかし、自分が信じる方法に頼るだけでも感染症の場合は周囲を危険に巻き込む。現在のような状況下で、効果が未確認な民間療法などを安易に推薦することは、前述のような予期しないリスクの増大を招く可能性もある。厳に慎みたい。仮に善意なのだとしても、今の刻々と状況が変わって行く段階での勧誘は、さまざまな不安の高まりを利用して顧客獲得を狙う「不安商法」の代表的なふるまいと同じだと言われてしまう危険がかなり高い。そうした自分自身の信用に関わる事態にも発展しうるということも、今は考えておくべきかもしれない。